CANON EF50mm F1.4 USM はキヤノンの一眼レフカメラの標準レンズです。フルタイムマニュアルフォーカスが特徴で、オートフォーカス(AF)時でもマニュアルフォーカス(MF)を併用できるというのがウリです。
趣味のバドミントンでゲーム中の選手を上手く撮る条件とは、
①暗い体育館で早い動きの被写体を撮るには、レンズは明るくAFが早いこと。
②コートサイドのネットポールの位置からだと焦点距離80mm(APS-Cセンサーでは50mm)のレンズが丁度よいこと。
③縦位置でも横位置でも不自由なく撮れるカメラであること。
です。
実際の私のバドミントン仕様と使用は経済実態を加味して、
EOSキュービック(Kiss DX+バッテリーグリップ) にEF50を付けて、ファインダーを覗きながらMFで追いかけ、シャッターチャンスでシャッターボタンを押すと瞬時にUSM(ウルトラ・ソニック・モーター)でAFが合焦しピントピッタリの写真が撮れるというものです。
実際には視神経から脳を経由して右手の人差し指に伝わるまでに時間ののズレが生じますが、少し早めにシャッターボタンを押すことで
高速連射の高級機なみの写真が撮れるのです(ウソです)。
ところが、このレンズ最近AFの調子が良くありません。マニュアルフォーカスリングを回すとゴリゴリとした感触があってスムーズに動きませんしAFが働かないこともあります。
たぶん、AFとMFを切り替えるクラッチが汚れているのでしょう?
ネットを調べれば分解修理のし方ぐらい載っているだろう?
AFレンズは分解修理後にめんどくさいピント調整はしなくてもよいハズ?
ということで、せっかく?壊れたのですから連休の暇つぶしにはちょうど良いかもと自分で修理することにしました。
↓EOSキュービック バドミントン仕様。分解修理に必要なのはシリコンスプレーとエアスプレーに小さなドライバー。

↓先ずは前玉部分からアタックすることにして距離メーター窓の付いている筒のネジを3個外します。

↓筒は簡単に外れました。筒の中には赤○で囲まれた半透明のワッシャーが入っていますので、取り付け時に忘れないように。

↓写真の状態では取り外したネジ穴が見えるだけで、マニュアルフォーカスリングを固定しているものは何も見当たりません。

↓マニュアルフォーカスリングは簡単に上方向に抜けました。白い色の歯車はマニュアルフォーカスリングの内側にある歯とかみ合っています。

↓フォーカスリングを抜き取った状態。白い歯車を回すと前玉が前後に動くのを確認できるのみです。これ以上分解するのも意味がないので、前玉側はこれでお終い。

↓続いて、後ろ玉側からアタックします。ネジを4個外すと銀色のリングが外れると思ったのですが斜めに少し開くだけで、カメラ本体との接点部が何かに引っかかっていて外れません。

↓まだどこかにネジでもあるのかと調べると接点部側面に小さなネジが2本見えたので外しました。

↓ネジを外したのに接点部はビクともしません。少し開いた隙間から覗くと赤○で囲ったフックが見えました。ドライバーの先で押すと接点の周りを囲っていた黒いプラスチックのリングが外れました。

↓黒いリングが外れると接点は下の電子基板側に残り、銀色のリングが簡単に外れました。黒リングは赤○で囲った4個の爪で銀色のリングに引っかかっていると同時に接点部を押さえていたのです。

↓さらに内部にアタックするには電子基板を囲っているプラスチックのカバーを外さなくてはなりません。固定しているネジが見当たらないので嵌り込んでいると思われる部分をマイナスドライバーで突っついていると隙間が空きましたので上へ抜き上げました。カバーにはAFとMFを切り替えるスイッチが一緒に付いて外れてきました。

↓フォーカス切替スイッチはスライドさせてカバーから分離しました。

↓フォーカス切替スイッチの裏側にはミゾが切ってあって電子基板裏側のスイッチが嵌るようになっています。

↓電子基板に付いているフォーカス切替スイッチ。小さいので組み立て時に上の写真のミゾに上手く嵌めないと折れますので注意が必要です。

↓電子基板を固定しているのは赤○で囲ったネジ1本だけですが、その前に3本のフレキシブル配線を外す必要があります。

↓フレキシブル配線が抜けないように固定している白色のクサビは赤○で囲ったフックで緩まないようになっていますので、引っかかっているフックを外し、白いクサビを後ろへ引きます。

↓赤○で囲った部分がフレキシブル配線が抜けないようにしているクサビで、写真の開いた状態で抜き差しが可能です。

↓USMモーターのフレキシブル配線は単に嵌っているだけなので白い部分を指でもって引っ張れば抜けます。嵌めるときも指で差し込むだけです。

↓電子基板を外した状態。右のフレキシブル配線が両面テープで固定されているので、もっと分解する場合は接着を外しておく必要があります。

↓外した電子基板。黄色○で囲った部分は調整用の抵抗器なのでネジと勘違いして回さない様注意が必要です。

↓第一の失敗。
さらにレンズ内部にアタックするには、レンズ本体の外周部の3個のミゾに嵌っている赤○で囲った白い部品を外さなくてはなりません。この白色の四角いチップを3個外してレンズ群を左に、USMモーターアッセンブリー部を右にスライドさせて分離しようとしたのですが、次の写真の黄色い四角で囲ったブラシ(距離情報検知?)を先に外しておかないとブラシが当たって分離できないのです。外してなかった為にブラシが引っかかって曲がってしまいました。

↓第二の失敗。
赤○で囲った、ブラシを固定しているネジが固くてネジの頭をナメそうになったので強く押しで回したのが悪かったようで、ブラシの下のプリント配線にネジの痕が付いてしまいました。
ブラシを外すのはプリント配線の無い位置で行うべきでした。

↓ネジ痕で凹んでしまったプリント配線。私の気力はもっと凹みました。

↓引っかかって曲がったブラシ。この程度なら戻せる?

↓ようやくたどり着いたUSMモーターアッセンブリー。
オートフォーカスは黄色の○で囲ったギアを通じて緑色の○で囲った真鍮のクラッチを通じ赤紫色の○で囲った白いギアを通じてヘリコロイド筒を左右に動かしてレンズを前後に動かします。
マニュアルフォーカスは赤○で囲ったギアを通じて緑色の○で囲った真鍮のクラッチを通じ赤紫色の○で囲った白いギアを通じてヘリコロイド筒を左右に動かしてレンズを前後に動かします。
AF側もMF側も手で歯車を回してクラッチの伝達状態を確認しましたが全く正常でこのUSMモーターアッセンブリーを分解する必要はありませんでした。

↓上の写真でクラッチからの動力を伝達する赤紫の○で囲ったギアは、この写真の赤○で囲った歯に噛み合ってヘリコロイド筒を回転させます。

↓USMモーターアッセンブリーに異常がないので、ヘリコロイドや回転する鏡胴の摩擦を疑うしかありません。そもそもヘリコロイドとは螺旋状のネジミゾで手動で回転させてレンズを前後させてピントを合わせる機構ですが、このレンズでは鏡胴に斜めに切ってある溝でレンズを前後するようになっています。それはレンズ内に組み込んだ非力なモーターではヘリコロイドを回転させることができないからです。そこでヘリコロイド筒を外してグリースを除去してシリコンオイルをを塗布することにしました。

↓上の写真の赤○で囲ったプラスチックの摺動チップを外してヘリコロイド筒を外し、シリコンオイルを塗布しました。(レンズを付けた状態でシリコンスプレーで塗布するとレンズにシリコンが付きますので注意が必要です)
このレンズのヘリコロイド筒はミゾが2本なので2点でレンズ筒を支えることになるので、ある程度繰り出したレンズは自重で下を向き、ヘリコロイド筒溝のプラスチックのチップは摺動部の面で荷重を支えることができず、点で支えることになると思われます。そのことによってスムーズな動きが出来なくなってチップが摺動面をゴリゴリと擦るものと思われます。溝を3本にすればこの症状はなくなるのではないかと推測しますが・・・。

↓曲がってしまった距離情報検知ブラシを修整しました。

↓ブラシの取り付け取り外しはプリント配線が無い赤〇で囲った部分で行うのが正解でしょう。黄色の〇はブラシのネジを取り外す際に出来た凹み傷の部分です。

↓摺動する部分や回転で擦れる部分に綿棒でシリコンを塗布しながら、分解とは逆の手順で組み上げました。
試写では、マニュアルフォーカスリングを回す時のシックリ感が薄れて少し軽いかな~と感じましたが、AFも絞りも問題ありませんでした。修理完了です。
テーマ:DIY - ジャンル:その他
- 2012/01/09(月) 21:51:55|
- DIY
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kaachさん
こんばんは。
たしかに、暇があるからといってできるものではありませんね。
好奇心が人一倍あって、お金がないことがDIYの第一条件です。

- 2012/01/10(火) 22:26:59 |
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- おるごどん #-
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CANON EF50mm F1.4 USMを昨年夏買って、今も使いこみ中です。
同じレンズのお話なので、解らぬのを承知で、通読しました。
解らぬままに、最後は修理完了。
魔法の腕と言うべきか。。。
まいまい驚かされます。
今年も宜しくお願い致します。
- 2012/01/11(水) 20:14:37 |
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- ijin #7ozVZe.w
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